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研究内容



  1. はじめに

空気やアルゴンなどの気体に1〜100kVの高電圧をかけると、 荷電粒子が加速され分子・原子との衝突・電離を繰り返し、プラズマ(= 電離気体)が生成されます。 プラズマは反応性の高い「超高反応性ガス」であり、 通常では考えられないような強い反応が発生します。 我々の研究室では様々な大気圧プラズマ(ストリーマ放電、バリア放電、 プラズマジェット、大気圧グロー放電、スパーク放電)を用いて
    「プラズマ反応を利用した未来のエネルギー・環境・医療技術の研究」
に取り組んでいます。また、これらプラズマ技術の開発に重要なプラズマの基礎研究、すなわち
    「プラズマ反応をレーザー計測とシミュレーションで解き明かす基礎研究」
にも取り組んでいます。

プラズマ中では、周囲のガス分子(N2, O2, H2Oなど)や原子に高速電子が衝突し、電離・付着・解離・励起などの反応が生じます。 その結果、様々なイオン、ラジカル(反応性の高い中性粒子:例えばO原子やOH分子など)、 励起種が生成され、化学反応を起こします。 これらの高反応性粒子を活性種と呼び、活性種の働きによりプラズマの反応性が高くなります。



  2. プラズマエネルギー技術
2.1 プラズマ処理による次世代太陽電池の開発

エネルギー問題の切り札となる太陽電池。 色素増感太陽電池は、酸化チタン(TiO2)の 多孔質薄膜電極を色素で色付けして発電する、 新しいタイプの次世代太陽電池です。 性能は従来型の太陽電池より劣るものの、安価に製造できる特徴があります。 この酸化チタン電極をプラズマ処理すると、プラズマ反応により特性が改善され、 太陽電池の性能が向上します。 具体的には、プラズマで生成される様々な活性種(OH, O, O3)や 荷電粒子の反応による、TiO2電極表面化学組成の変化による色素吸着量の増加、 TiO2ナノ粒子同士のネッキング(ミクロな結合)促進などが期待されます。 プラズマ処理を用いた、色素増感太陽電池の新しい製法を開発しています。

       

(左, 中央) 色素増感太陽電池。(右) プラズマ処理。



2.2 プラズマ着火・燃焼

エネルギー発生の源となる燃焼反応。自動車や航空機のエンジンで、 燃料をプラズマで活性化して燃焼効率(= 燃費)を向上させる技術があります。 プラズマの強力な反応で燃料分子と酸素分子の結合が切断され、 燃焼効率が向上します。 またプラズマには、自動車エンジンのスパーク着火のように燃料を着火する働きもあります。 我々はプラズマ着火・燃焼に関連して、可燃ガス中でスパーク・プラズマを発生させたときの プラズマ−燃焼反応を調べる研究を行っています。 可燃ガスには、最も簡単な化学組成をもちモデル化が容易な水素を使っています。 この研究は、将来の燃料電池を主体とした水素エネルギー社会で使われる水素燃料の、 静電気放電着火事故を防ぐエネルギー安全利用の研究にも関係しています。

   

(左) 水素のプラズマ着火実験。
(右) 水素プラズマ着火における燃焼中間体OH分子のレーザー計測。



  3. プラズマ環境技術
3.1 環境汚染ガス処理

持続可能な社会の発展には欠かせない環境対策。工場・発電所・自動車からは、 燃料を燃やしたあとの燃焼排ガス、化学物質など様々な環境汚染物質が排出されます。 プラズマの化学反応を利用して、 これらの環境汚染物質を簡単・安価に分解除去する研究を行っています。



3.2 水処理

汚染水の中で水中プラズマを発生すると、水分子(H2O)が分解してOH分子が生成されます。 このOH分子の極めて強力な殺菌・化学物質破壊効果を利用して汚染水を浄化する、 プラズマ水処理技術を開発しています。




  4. プラズマ医療技術

健康な長寿社会を支える医療技術。プラズマに怪我やがん治療の効果があることが最近分かってきました。 しかしその治療原理は不明で、プラズマ医療が本当に使えるかどうか、専門家の間でも意見が分かれています。 医学の専門家と共同研究を行い、プラズマ医療の原理解明へ向けた研究 に取り組んでいます。

       

左から順に、医療用プラズマ、細胞実験(共同研究)の様子、
プラズマ医療で重要なOHラジカル密度の二次元分布レーザー計測



  5. プラズマ反応の基礎研究
5.1 プラズマ反応のレーザー計測

プラズマ反応技術の中核となる活性種の強力な反応。 プラズマ反応技術の開発には、プラズマ反応そのものを調べる基礎研究が重要です。 プラズマ反応で重要な様々な活性種をレーザー計測し、 プラズマ反応を解明する研究を行っています。 これまでに計測した活性種の一覧を下表に示します。 活性種は反応が速いため寿命が1us〜1msと極めて短く、高度なレーザー計測が必要です。

       

(左) レーザー計測設備。(右) パルスコロナ放電後のOHラジカル密度一次元分布時間変化のレーザー計測結果。


       

(左) レーザー計測した活性種のリスト。(右) 環境汚染物質のNO分子が、パルスプラズマで高速分解される 様子をレーザー計測した結果。



5.2 プラズマ反応シミュレーションの開発

プラズマの発生から活性種の生成・反応まで、すべてを再現できる 高精度プラズマ反応シミュレーションの開発を行っています。 このシミュレーションが完成すれば、プラズマ応用技術の開発ツールとして大いに役立てることができます。

       

(左) ストリーマ放電の電界強度と電子密度のシミュレーション。
(右) ストリーマ進展ストリーク写真の、計測 (上) とシミュレーション (下) の比較。




  6. 今後の展望

プラズマは通常では起こせない反応を容易に発生できる「超高反応性ガス」であり、 この他にも様々な応用が考えられます。 プラズマは大きな可能性を秘めた未完の技術であり、これからも様々な応用技術、 特にエネルギー・環境・バイオ・医療・材料改質と合成に関連した技術を開発していきます。